インタビュー 夢・希望・未来 ~想いのカタチ~

盲ろう者の仲間とともに
心から笑顔になれる場所

NPO法人ヘレンケラー自立支援センターすまいる
事務局長 石塚由美子 様

聞こえない聞こえにくい、見えない見えにくい。それらが組み合わさった重複障害の方々を盲ろう者と言います。ヘレンケラーの伝記を読んだことがある人は多くても、今私たちと同じこの社会で暮らしている盲ろうの方々について正しく知っている人はどれだけいるでしょうか。

大阪・鶴橋駅近くの盲ろう者が集う場所、NPO法人ヘレンケラー自立支援センターすまいる。ここではさまざまな活動を通じて、盲ろう者が生き生きと暮らせるよう支援されています。

事務局長で聴覚障害当事者でもある石塚由美子様にお話を伺いました。少しでも理解を深めていただけるきっかけになれば幸いです。
(石塚さんは視覚に障害はないため盲ろう者ではありません)

「すまいる」ってこんなところ

Q.現在すまいるには何名ぐらいの盲ろうの方が通われていますか?

登録者としては17名です。(2022年4月時点)
他にろう者もおられます。また盲ろう者はひとりで移動するのが困難なので、通訳介助者と一緒に来られています。ですので同じ数だけ通訳介助者もいることになります。あと職員が固定で11名、ボランティアもいるので、だいたい毎日35名ぐらいは集まっていると思います。

ただ通訳介助者は、利用者がすまいるで活動している間の給料は支払われません。すまいるは就労継続支援B型事業所なので行政から補助金をいただいています。そのためB型で作業中の利用者に、通訳介助者としてサポートすると制度の二重使いになります。とは言え、作業中も盲ろう者への情報提供は必要なため、ボランティアという形で無給でお世話をしていただいてます。ほんとうに皆さんには申し訳ない気持ちでいっぱいです。

手話を使って丁寧に受け答えしてくださる石塚さん


Q.利用者さんはB型事業所の作業をされている方ばかりですか?

そうです。企業の方から内職をいただいて皆さん作業をされています。それが活動の中心なのですが、仕事だけでなく情報提供にも重きを置いています。月に1回、時間を設けて社会で起きているニュースなどをお伝えしています。その間は仕事はいったんお休みです。

盲ろう者同士での意見交換も大事なので会議も行います。盲ろう者が中心となっていろんな企画を考えてみんなで一緒に楽しむ行事をつくるとか。あとはパソコンを学ぶ時間もありますし、幅広い活動をしています。ほかにはヨガ、空手、タップダンスなどのクラブ活動もやっていて、皆さんの健康増進をかねたリクリエーションにも力を入れています。

「すまいる」には仲間がいる

Q.すまいるにご相談される方はどのようなお困りごとを抱えていますか?

一番はやっぱり生活に関する困りごとですね。盲ろう者はご家族と暮らしている方が多いですが、将来はひとりになってしまう。「どうすればよいか」「不安が大きい」などです。そのために盲ろう者向けのグループホームを5年前に立ち上げました。

あと、盲ろう者は家に引きこもっている方が多いので、ご家族からお問合せをいただくこともあります。ほかには通訳介助者からも相談をいただいたりします。


Q.相談された方がその後すまいるを利用するようになって変化はありますか?

もう、それはすごくあります。役所で知ってここに来られたりするのですが、最初はほんとうに暗いんです。自分は何もできないんだ、と悲観的に捉えておられて。触手話もすまいるで初めて経験される方が多いので、これで会話ができることにまず驚かれます。

私が「ここには他にも盲ろうの方がたくさんいますよ」と言っても最初は信じてくれない人もいるんです。どうしてなのか、後でわかったのですが、「こんな障害を持っているのは自分だけだ」「可哀そうだから同情して他にもいると言っているんだ」そう思っている人が非常に多いです。

でも実際に同じ障害を持つ盲ろうの方と交流を深めていくうちに、「自分だけじゃなかったんだ」「同じような障害を持つ仲間がいる」「聞こえなくなったり、見えなくなった経緯や生い立ちも似ている」そう気付いて、そこから変わっていかれます。

ご家族や役所の方から、点字を覚えたほうが良いとか白杖を使ったほうが良い、といったアドバイスを受けても自分はできないと思い込んでいる人も多いです。それが同じろうベース(元々耳が聞こえなくて、後から目が見えなくなった人)の盲ろう者が点字で本を読んでいる、なかにはパソコンを使っている人もいる、と知って火がつくようです。自分も覚えたいと言って勉強を始められます。

だから仲間の存在はすごく大きいです。仲間がいるから切磋琢磨できますし、仲間の助けがあるから頑張れるんだと思います。

通訳の方を交えて話が展開していくインタビュー風景

コミュニケーションはいろいろ

Q.コミュニケーションの手段にはどのような方法がありますか?

元々ろうの方は手話を身に付けておられます。その後見えなくなった場合、手話に触れてコミュニケーションを取る「触手話(しょくしゅわ)」を主に使われています。元々盲の方で聞こえなくなった場合は、点字を指に打つ「指点字」があります。ただこれを使用されている方は非常に少ないです。あと、難聴者の方はマイクを使って音声でコミュニケーションされたり、手のひら書きというとても簡単な方法や、指文字に触れる方法もありますし、視力が残っている方であれば接近手話を使われたりしています。ほんとうに人によってさまざまですね。

最近は背中に書く「サイン」を使われることもあります。情景を伝えることが多いのですが、人が話をしているのをみんな聴いているとか、拍手をしている、誰が入ってきたというのを合図するんです。

素早い手の動きで真摯にお話してくださる石塚さん


Q.コロナ禍で生まれた新たなコミュニケーション方法はありますか?

難しいですね。コミュニケーション方法は変わりません。盲ろう者の場合、離れてしまうとコミュニケーションができないんです。触れる、というのが基本ですから。なのでお互い感染対策に気を付けて、ということになりますね。

ただ、最近パソコンを覚えられた盲ろうの方がいて、メールでやり取りをしたり、情報もご自分で入手されたりしています。コロナになってから自分もパソコンを覚えたい、という方が増えましたね。

もっと盲ろう者向けの施設を

Q.では今後について伺います。直近で何か計画されていることはありますか?

本来であれば、すまいるの創立記念イベントをやりたいですし、触って楽しめる旅行なども計画したいと考えています。2年後が25周年なのですが、このような状況下ですので難しいかもしれません。でもコロナで何もできないとなると、皆さん落ち込まれますし、どうしようか迷っているところです。

すまいるには和太鼓クラブがあるのですがそれも今は活動できていません。和太鼓って体に響いて盲ろうの方にもわかりやすいんです。ですが音の問題があるので街中ではなかなかできなくて。練習場所が少し離れていて公共交通機関を使うのですが、それも今ははばかられますし……。代わりになる他の何かないかなぁと探しているところです。


Q.最後に、将来のすまいるとしての目標とか夢などがあればお聞かせください。

もっと盲ろうの方に集まっていただいて、施設的にも大きくできればと思っています。それと先ほど申し上げたグループホーム。今の定員が10名なので、2号棟3号棟と建てられたらいいなぁと思っています。

現在盲ろう者は全国に14,000人いると言われています。でも盲ろう者向けの施設というのは他にはないんです。今のところすまいるだけで。他の地域の方は、聞こえる方と一緒になるか、ろう者の施設に入るぐらいしかないので、盲ろう者向けの施設をもっと作っていきたい、という想いがあります。

※今回の取材には通訳者の山塚様にご協力いただきました。
こちらのまとまりのない質問を適格に手話で伝えてくださるその技術の高さに感心しきりでした。

阿吽の呼吸で通じ合う石塚さんと通訳の山塚さん

取材日:2022年4月12日


NPO法人ヘレンケラー自立支援センターすまいる様HP
http://db-smile.jp/index.html