導入に至った経緯から、導入実例

東京学芸大学

障がい学生支援室     ご担当者様

設置場所:研究棟の⼊⼝〜階段まで

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バリアフリーについてどう感じていますか?

(学内では)差別解消法の施行以来、さらに意識が高まっている気がします。

学内自体も古い建物が多いので、改善したくてもできないところがあったり、予算の面で難しいこともあるのですが、それでも、少しずつでも環境を整えていく取組みは必要だと思います。そして、ハード面だけでは補えないところは、多くの人の意識や障がいについての理解というソフト面と合わせて、両方を進めていくことができると良いと思っています。

特に本学では、そういった配慮や支援全般を「ナチュラルに」行うことも重視しているので、合理的配慮を受けるために煩雑な手続きをしなくてはならなかったり、反対に過剰な支援が行われるようなことがないようにしていきたいですね。ですから、例えば、そっと小さな支援ツールが置かれてあるだけで、自然とみんなが居心地のいい空間になる、そんな学習環境づくりが大事ですよね。そういう発想は、バリアフリーというか、ユニバーサルデザインの概念だと思いますが、特定の障がいの方への配慮や支援に限らず、フラットでさりげなくそこにあって、でもとても役に立つ『歩導くん』はなかなか良いツールだなと思いました。自然とみんなが使いやすい場所になることが理想的ですね。

歩導くんを導入してみていかがですか?

研究棟の中に設置してからは、視覚障がいの学生さんが壁や柱にぶつかることなく歩けているようです。歩導くんを導入したことと、本人が建物内の歩行に慣れてきたタイミングがちょうど合って、ひとりでも結構自由に行動できているのを見て安心しました。

(導入したことによって)ご本人から「これと言って特にない」という感想があったのですが、私は良かったと思っています。と言いますのも、「すごく良かった」というよりも「ちょっと楽になったな」という感覚を持ってもらえたらいいなと思っていましたので。あとは、車いす、ベビーカーユーザーや、キャリーバックを持っている人にもいいですよね。台車も通る所なのでガタガタしないのは助かります。

それ以上に効果があったのが、周囲の理解啓発になるということですね。反応が断然違いました。「あれは何?」ということから始まり、とても興味を引いています。実際に私が設置をお手伝いさせていただいたのですが、その様子をご覧になっていた先生方が、学生さんたちにも説明してくださったりとか。それを聞いた学生が支援室に来て「変わりましたね!いいですね!」と声を掛けてくれたりすることもありました。

今回設置した場所は、特別支援教育(障がいのある子どもの教育)を学ぶ学科の研究棟だったもので、特に学生さんたちの意識も高かったですし、「こういうツールがある」ということを知ってもらえたのも意義が大きいと感じています。(国際シンボル)マークが付いてありましたので、歩導くんが置かれている理由もそれで十分理解してもらえるというのもありましたね。

最後に、もう1点。この研究棟には研究協力や療育・指導のために小さなお子さんや自閉スペクトラム症、知的障がいなどのお子さんたちもいらっしゃるのですが。お子さんたちは何もないところだと急にバーッと走り出してしまったり、その空間が分かりにくかったり収まりが悪かったりするとなかなか前に進めないことがあるんですね。興味深かったのが、歩導くんを設置した後に「線路みたい」と言って、お子さんたちが歩導くんの上をスムーズに歩いてくれたそうなんです。副次的ですけど、これは素敵なエピソードでした。

今後、どのような活動をしていきたいですか?

本学では、学生サポーターが例年150名以上登録しています。

学生サポーターは決められたことに対応しているのではなくて、周りに困っているのかなと思う人がいればちょっと声を掛けてみたり、話を聞いて支援室まで連れてきてくれることなどもあるんです。こういったナチュラルなサポートができているのがいいと感じています。障がいのある学生と、その周りの学生が一緒に育つというところが重要だなと思っています。

それから、この支援室には比較的いろいろな学生さんも来室されますが、ある時、障がいのある学生が部屋で話しているところに、違う種別の障がいのある学生が来て、自分の障がいのことや授業で受けている配慮の話しをし始めて。そこに学生サポーターも来て・・・と、障がいのあるなしや、感じ方や特性の違いにかかわらず、そうやって自分の想いや考えを語り合える場所って、なかなかないんじゃないかなと思いました。
聴覚障がい学生と、視覚障がい学生とが一緒に会話する時には、間に入るサポーターも「伝わらない!」という経験もしますし、「どんな支援がベストなんだろう?」と悩むこともあります。でもしばらく一緒にいるうちに、視覚障がい学生が手話を覚えたりだとか、その際に聴覚障がい学生が視覚障がい学生に手の形を作って教えたり・・・。そういう新しい空気が生まれているのがいいですね。こんな風に、もっと空間も気持ちもオープンになれるような場所が学内にたくさんあってもいいかなと思っています。

またこの度の設置で、学内のバリアフリー化も一歩進みましたけれど、学生さんや教職員の反応も楽しみです。ポジティブなものだけではなくて、ネガティブなご意見も出てくることもあるかもしれませんが、それがまた次の支援を考えるステップに繋がると思いますので。どこでもネガティブな反応というのは警戒されるかと思いますが、それを貴重な意見として丁寧に対応していくことや、捉え方次第でプラスに変化できるような発想の転換や思考の切り替えもまた、大学の支援体制作りには大切な姿勢かもしれません。障がい学生支援室だけではなく、他の部署とも協力しながら、これからも環境整備や支援の充実に努めていきたいと思います。

 

取材日:2017年9月28日