導入事例と採用側の想い

近畿大学 ワクチン接種会場

文能照之教授とゼミ生の皆様

設置場所:近畿大学 東大阪キャンパス記念会館

近畿大学では、2021年6月21日より、新型コロナウィルスワクチンの職域接種を実施されていました。その過程においてワクチン接種会場となった東大阪キャンパス記念会館に、誘導マット・歩導くんを設置していただいたのですが、どういった経緯で設置に至ったのでしょうか。導入に向けて奔走してくださった、経営学部キャリア・マネジメント学科の文能照之教授と、ゼミ生の山下さん・山﨑さん・神田さんにお話を伺いました。

見て感じて自分で考える力を養うゼミ

Q.まずは文能先生のご専門分野である「中小企業論」「ベンチャービジネス論」について簡単に教えていただけますか?

文能教授:ひと昔前の中小企業は、大企業の下請けとして、要求された通りのものを作って納めることで発展を遂げてきました。ですが、今では独自の技術で大企業にはできない部品を作ったり新たなことにチャレンジする力を持つようになっています。にも関わらず、世の中の認識は古い考えのままです。授業ではそれらを踏まえ、過去から現在までの流れの中で中小企業の置かれている位置や、どのようにして生き残りを図ろうとされているかを紹介しています。と同時に、中小企業に対する前述のような認識を改めてもらうとか、そこに光が当たるようゼミの活動を通して取り組んでいます。

Q.学生さんにもお聞きします。ゼミではどのようなことを学んでいらっしゃいますか?

山下さん:みせるばやお(※)に加盟されている中小企業さんをいくつかのグループに分かれて訪問しています。そこで中小企業の魅力や高い技術力を目で見て学び、企業PR動画を作成し発信することで自分たちの知識を深めています。その一環で私たち3人は歩導くんをワクチン接種会場に導入するという活動を行ってきましたが、他のグループは企業さんとオリジナルの製品開発に携わって実際に商品化するなど、さまざまです。

(※)大阪府八尾市の中小企業が結集し、ものづくりを通じて社会貢献をしたり、ものづくりの魅力を発信している施設および共同体
詳しくは、こちらから「みせるばやお」公式サイトをご覧ください

Q.座学だけのゼミも多いイメージですが、皆さんは実地調査なども積極的に行われているのですね。

山下さん:企業訪問を重ねることで目で見て肌で感じて学んでいます。

文能教授:補足しますと、ゼミのテーマとして、「企業成長分析」を掲げています。企業はどのようなことをして成長・発展を遂げているのかを考える、というものです。企業さんは、いろいろ取り組まれている内容や持っている技術が違って、それぞれにユニークな良さをお持ちです。ゼミ学生にはどこに成長している要因があるのかを実際の現場で勉強させていただき、感じ取ってもらうようにしています。社員の方と接することで、教科書にはない部分を自分たちで考えてほしいと思っています。

ズタボロになってからの復活劇

Q.ではワクチン接種会場の歩導くん敷設について伺っていきたいと思います。この会場に設置したらどうだろう、というアイデアはどのような流れで出てきましたか?

神田さん:山下君がテレビで「近畿大学をワクチン接種会場にする」というニュースを見て、僕たちに一報をくれたんです。それで、「ここに誘導路として歩導くんを導入できるんじゃないか」という提案から具体的に動いていきました。

文能教授:それまでの話もあったよね? 錦城護謨さんでも良い製品をいろいろ持っておられますが、世の中には良い製品なのに普及しないことがたくさんあります。その良い製品を近畿大学で普及させたい、と思っていまして、経営学部の建物の中でどこかに設置できないか、彼らが検討していたんです。ただ経営学部の建物では難しく行き詰まっていたところに、いま彼が話してくれたようにワクチン接種会場の話がでてきて、これならいけるんじゃないか、となったわけです。

山下さん:学内のアカデミックシアターという総合図書館のような建物に導入しようとしていて、ちょうどそのニュースの2時間ぐらい前に、僕たちの考えをその施設の方に提案したんです。ところが中途半端な提案をしてしまったのと、本気で歩導くんをアカデミックシアターに導入できるのかどうか、という戸惑いもありながらだったので、率直に言うとボロボロでした。それでズタボロにされて3人意気消沈して諦めようと帰ってきたときに、テレビでそのニュースを見て、「これしかない!」ってなって、すぐにメンバーに連絡して形になっていきました。

Q.最終的な決裁権限は大学の総務課だとお聞きしていますが、そちらへの働きかけも学生さんがされたのでしょうか?

山下さん:最初僕たちが先生に提案して、先生から総務課の方にアプローチしていただきました。

Q.先生からお話された段階ではスムーズに事は運びましたか?

文能教授:学生から提案があるので話を聞いてくださいとお願いをして場を設けてもらったんです。総務課から2人出席していただいて、彼らに歩導くんの製品紹介をしてもらいました。

Q.そのために資料なども準備されたんですよね?

山下さん:お忙しい中時間を取っていただいたので、中途半端な状態で臨みたくないという思いがありました。以前その経験をしているので、先生にも資料をチェックしていただき、修正をして、完成したものでプレゼンしました。

Q.ではそこで総務課の方にもご承諾いただいてGOサインが出たということですか?

文能教授:GOサインというよりも、いい話があったらお繋ぎします、ぐらいの感じでした。なのですぐに、というわけではなく、しばらく時間が空いて、「そろそろプッシュしないと」と思っていた頃に、ちょうど連絡が入ったような感じです。

1回目の接種で浮上した課題を歩導くんで解決

Q.そこから設置経路を決めるのは学生さん主体で行われたのでしょうか?

山下さん:ワクチン接種会場の設営会社様が、「ワクチン接種を行う上でここの経路がわかりにくい」と仰るのを聞いて、僕たちが課題解決を行う形になりました。

文能教授:接種会場を作るときに最初から我々が関与していたのではなく、関与を始めた時には既にワクチン接種がスタートしていたんです。既存のルートが出来上がった中で、人が渋滞しているところやわかりづらくなっている箇所を、「歩導くんの誘導路で提案してほしい」という話になったんだと思います。

山下さん:実際に導入したのは2回目のワクチン接種からなんです。僕が提案したタイミングが、ワクチン接種会場がもう完成する段階だったので、そこから歩導くんを導入するのは難しいというのもあって、プレゼンのあと少し間が空いたんだと思います。1回目の接種のときに出た課題を僕たちが解決するという形で、2回目からの導入になりました。

Q.実際の設置作業も学生さん自身で行われたと聞いておりますが、やってみていかがでしたか? 簡単にできましたか?

山崎さん:私たちのように、知識とか何もない人でも簡単に両面テープで設置できたので、手軽に設置できるのが歩導くんの魅力だと感じました。

Q.設置いただいたあと、実際に来場された方からのお声など何かお聞きになられましたか?

山下さん:僕の友だちやゼミの他のメンバーの意見なのですが、「すぐに目立つ、ぱっと目に入る」という声がありました。最近の学生はスマホに慣れすぎて、目線が下に行きやすいというのがあるので、道筋がわかりやすいと言ってくれてすごく嬉しかったです。

歩導くん導入の経験から得た気付き

Q.歩導くんの提案や設置に携わっていただいたことで、福祉やバリアフリーなどに対する意識の変化などはございましたか?

山下さん:僕は今まで自動ドアや点字ブロックを、街にある景色として何気なく捉えているだけでした。それが歩導くんに携わったことで、弱視の方や障害を持つ方が暮らしやすい、生活を豊かにする、そんな素敵な商品だと気づき、それをただ単に景色として見ていた自分が子どもだったというか、感性がなかったのかなぁと……。そういう街づくりに感動して、より意識して見るようになりました。

山崎さん:私自身は障害がないので歩導くんのような商品は自分には関係のないものと思っていました。でも健常者にも視覚的に案内ができて、誰にでも利用できると知って、そういう商品がもっと世の中に広まったらいいな、と思いました。

神田さん:今回の歩導くん導入の活動を通じて、今まで知らなかった歩導くんを深く知ることができました。点字ブロックとの大きな違いで言えば「段差がない」という点です。日本中いろんなところに点字ブロックが敷かれていますが、皆さん1度ぐらいは躓いたり、スーツケースが引っかかったりしたことがあると思います。これが歩導くんに置き換わったらな、と思うことが増えました。

将来への誘導路は感謝する心

Q.文能ゼミでの経験も踏まえながら、これからどのような社会人になっていきたいか、もしまだ将来について悩んでいる最中であれば、今の気持ちをそのままにお聞かせください。

神田さん:僕は具体的ななりたい像とかはまだ定まっていないのですが、いろんな人と会って、いろんな人の考え方を吸収したいと思っています。これまで社会人の方と話すことはほとんどなかったのですが、今回錦城護謨さんの社員の方といろいろなやり取りをして学ぶことが多かったんです。だから社会人になってもいろんなコミュニティに参加して多くの人に会いたいと思います。

山崎さん:私はなにか小さなことでもいいので役に立つことをしたいと思いました。今回の歩導くん設置に向けては山あり谷ありでしたが、接種会場に設置することができて友だちにも「見やすかったし良かった」という意見をいただきました。それで自分が役に立つことができたんだというところから、やりがいとか達成感を感じることができたので、社会人になっても誰かの役に立つ仕事をしていきたいと思います。

山下さん:僕は小学4年生から高校3年生までサッカーをやっていて、サッカー選手を目指していたんですが、自分の技術の無さや、結果が出ないことから挫折してしまいました。サッカー選手は諦めたんですが、選手が身に付けるシューズやウェアを提供して、その商品で人を幸せにするとか、それを使う誰かの生活を豊かにするような仕事に魅力を感じています。
あと自分のなりたい像というのが、本気で人と向き合う、ということです。今までは環境に恵まれて甘えていたし、人に嫌われるのを恐れて周りに合わせて自分を作っていました。そこで本当の自分って何なんだろうって感じて、人を幸せにするには、本当の自分を出して本気で人と向き合わなければいけないと考えています。

Q.文能先生は、学生さんに対してどういった社会人になってもらいたいでしょうか?

文能教授:自分の力だけでできるわけじゃなくて、周りの人たちに支えていただきながら、生かされていることが多いと思うので、日ごろから感謝をする、そしてそれに対してお返しをするということを心掛けて取り組んでほしいと思います。ですので、その時その時で、できることを精一杯やってもらいたいですね。

 

取材日:2021年11月22日